会社設立(法人成り)を行い、個人事業を廃業した年の確定申告について、

主な注意点は以下の通りです。

 

○届出書

個人事業主が廃業した場合、廃業から1ヶ月以内に納税地の所轄税務署長に廃業届を

提出する必要があります。また、従業員を雇用して給料を支給していた場合は

給与支払事務所等の廃止届出書も忘れずに提出しましょう。

 

○決算整理

減価償却は月割計算で行います。貸倒引当金は戻入のみ行い、繰入は認められません。

 

○所得の種類について

会社設立した事業年度の確定申告においては個人から法人への棚卸資産の譲渡は事業所得、

事業用固定資産の譲渡は譲渡所得となります。また、設立した会社からの給与は給与所得です。

 

○青色申告特別控除

廃業年度においても月割は不要、全額控除できます。

 

○青色専従者給与

法人成り後、同一暦年中に法人から給与の支給を受けてもかまいません。

会社設立前の専従者給与は全額経費として認められます。

 

○年末調整

個人事業で従業員を雇用しており、会社設立後もその従業員を引き続き雇用する場合、

年末調整はどのようにすればよいでしょうか?

面倒ですが、その年の年末調整については個人事業分、会社分をそれぞれ別々に処理して下さい。

書類も別々に作成する必要があります。源泉徴収票を個人・法人合算して作成することはできません。

従業員はその年、個人事業から新設会社へ転職したのと同じ扱いです。

 

○貸倒損失について

個人廃業後に売掛債権が貸倒となった場合には、廃業年度の確定申告について更正の請求が可能です。

 

○事業用固定資産の取扱いについて

法人成りに際して安易に個人から法人への譲渡・贈与・現物出資を行うと個人側に所得税・

消費税の課税関係が発生します。

従って自宅事務所や事業用車両については、なるべく個人が保有したまま法人に賃貸するほうが無難です。

 

そのメリットは・・・

→消費税課税事業者の場合、消費税の課税を回避できる。

→特に短期譲渡所得となる場合に、所得税の課税を回避できる。

→法人は利益状況に勘案して賃借料を経費計上できる(もちろん時価相当額の範囲であることが必要)。

→例えば自宅事務所を賃貸した場合、個人は住宅ローン利息・固定資産税・水道光熱費の

事務所対応分を経費にすることが可能であり、10万円の青色申告特別控除も利用できる

(但し消費税課税事業者は受取賃貸料に消費税も課税されることにご注意下さい)。