それでは実際の会社設立における現物出資の流れを確認しましょう。

ここでは発起人が金銭出資に加え、保有している自家用車1台を現物出資して会社設立を

希望しているケースを考えます。

 

まず最初に車検証のコピーを徴求して、「所有者が誰になっているか」を確認します。

株主本人名義であれば問題ないのですが、いろいろな事情で名義がご家族のお名前に

なっていることもよくあります。

例えば車が奥様の名義であれば、その現物出資に関しては基本的に奥様が株主と

いうことになります。

家族とはいえ株主が増える、自分以外の人物も株を保有するということは、会社設立後の運営に

重大な影響をおよぼしますから十分な確認が必要です。

 

もう一つ確認事項としては、その車にローンが残っていないかという点です。

ローンが残っている場合、所有権留保という状態で所有者がローン会社になっているはずです。

もし所有者が発起人名義になっているとしても、少なくともローン完済までは名義変更はできません。

前述のとおり、現物出資では会社設立後、遅滞なくその財産の名義変更手続きを行う必要がありますので、

基本的にローン中の車は現物出資に適さないとお考え下さい。

ローン完済後も所有権解除をしていない場合が多くみられますが、必ずローン会社に連絡してまず

ご自身の名義に変更しておいて下さい。

 

次に現物出資する財産の評価、すなわち資本金となる金額の決定を行います。

 

財産評価における基本的な考え方は「時価評価」です。

この点、車は非常に評価のしやすい財産であると言えます。

現在、中古車に関するホームページは非常に多く、車種と年式からおおよその相場も

わかるようになっているからです。

 

車の評価金額に関してはそれらホームページに記載されている相場の金額としていただいて構いません。

もちろん装備や走行距離で中古車の金額は上下しますが、その差は数万円から数十万円、

100万円も異なることはあまりないでしょう。

できれば相場の中央付近の金額にしておくことをおすすめします。

 

現物出資ではどうしても高めの評価を希望されるケースが多いのですが

、時価よりも高い金額にしてしまうと、①出資者に譲渡所得が発生する

②会社設立後の減価償却が否認される ③出資者は追加出資の責任を負う(会社法第54条)など、

大きなリスクを孕むことになりますのでご注意下さい。

 

税理士と相談しながら上記の名義確認、金額評価をすれば後は司法書士事務所が手続きを行ってくれます。

現物出資のために用意するものは、基本的には車検証のコピーだけですから、

車の現物出資はわりと簡単にできる手続きです。

 

但し...手間がかかるのはむしろ会社設立の後でしょう。

前述のように現物出資した財産は会社設立後に会社へ名義変更しなければなりません。

車の名義変更は①警察で会社名義の車庫証明取得→②運輸支局で移転登録となりますが、

こちらは書類も多く手続きも煩雑で、一般の方には一苦労です。

会社設立後の忙しい時期ですから、名義変更も行政書士事務所に依頼するという方法もあります。