それでは実際の会社設立において、発行可能株式総数はどのように決めれば良いでしょうか。
結論としては特別な事情がない限り、当初会社設立時に発行する株式の10倍と
しておけばよいでしょう。
すなわち一株50,000円・20株発行・資本金100万円の会社設立なら、
発行可能株式総数は200株にしておけば良いということです。
実は一般的な会社設立では、以下の理由から発行可能株式総数に神経質になる必要はありません。
理由一:増資はレアケースである。
現実問題として、中小企業で増資を行うことはめったにありません。
税制上、資本金が一定額を超えると税負担が重くなるなどの理由があるためです。
中小企業の資金調達はほとんどの場合、増資ではなく借入となります。
増資をしないなら、発行可能株式総数には特に意味がありません。
理由二:第三者株主はレアケースである。
中小企業では社長が全株を保有する一人オーナー、もしくはご家族ご親族に少しだけ株式を
持たせるというケースが圧倒的です。
また、万一増資をする場合でも、その引き受けは第三者ではなく、
社長ご自身が引受されることが多いでしょう。
発行可能株式総数は基本的に既存株主を保護するための制度ですが、株主が常に一人であるなら、
やはり意味がないことになります。
理由三:発行可能株式総数も後から変更できる。
発行可能株式総数自体、株主総会の特別決議で簡単に変更登記することができます
(登録免許税3万円がかかりますが)。
ほとんどの中小企業は一人オーナーですから変更=特別決議は別に難しいことではありません。
会社設立時に決めた発行可能株式総数をいつまでも守る必要はないのです。
以上、発行可能株式総数にはそれほど悩む必要はないこと、基本的には会社設立時の発行済株式の
10倍で良いことをお伝えしてきましたが、もちろんこれは特殊事情がない場合です。
例えば何らかの理由(多額の設備投資など)で増資が予想される場合、
特にその引き受けが第三者になる場合、
発行可能株式総数について慎重な検討が必要であることは言うまでもありません。