1、複数代表とは
複数代表とは文字通り、代表取締役が2人以上いる会社のことです。
そんなことが可能なのかと思われるかもしれませんが、制度上は何の問題もありません。
会社設立時に複数代表とすることもできますし、後から代表取締役を追加して複数代表とするケースもあります。
2人、あるいは3人以上が上司部下という関係ではなくパートナーとして会社設立する場合、よく見られるのは全員を取締役としたうえで誰か一人を代表取締役とするケースです。
しかし対等であることをより明確にするため、2人とも、あるいは3人ともが代表取締役になるケースがあるのです。
2、契約を行う場合
この会社が対外的な契約を行う場合はどうなるのでしょうか?
複数代表の会社では、各代表が個別に代表権を行使して契約を行うことが可能となります。
過去には「共同代表」という制度がありました。
この制度は全代表が共同して契約をしなければならないという制度でしたが、実際には一人の代表取締役が勝手に契約を行うケースも多かったようです。
そんな場合でも契約の相手方を保護するため、裁判になれば結局その契約を有効とせざるを得ません。そうすれば共同代表制度は意味が無くなってしまいます。
そのため、平成18年の会社法改正でこの共同代表制度は廃止になりました。
これから新たに設立する会社はもちろん、現在代表取締役が複数いる会社ではどの代表取締役も代表権を自由に行使できるということです。
3、複数代表の問題点
各代表取締役が個別に代表権を行使できる複数代表制ですが、当然ながらこの制度の下では代表取締役同士の意思疎通が万全でなければ会社の運営はうまく行きません。
相反するような内容の契約を、それぞれ勝手に締結するようなことがあれば会社はめちゃくちゃになってしまいます。
どうしてもうまく行かない場合の非常手段として、株主総会を開催して特別決議でいずれかの代表取締役を解任してしまうという方法も考えられます。
しかし特別決議を通すためには議決権の2/3以上の賛成が必要です。
例えば、2人の代表取締役が株式(議決権)も50%ずつ保有しているような場合はこの方法を採ることもできず、本当に会社は行き詰ってしまいます。
会社設立で複数代表を検討されている場合は、十分にパートナー間での話し合いを重ねて下さい。