個人事業者が会社を設立して事業を引き継ぐ、いわゆる法人成りの場合、
個人事業の資産・負債(財産と借金)も法人に引き継ぐこととなります。
今回は、このうちの負債(借金)の引継ぎについて考えることにしましょう。
負債といっても、事業に直接関係するもの(買掛金や支払手形などの仕入債務、
従業員給料などの未払費用)は、数か月以内に支払い、解消されます。
問題は金融機関からの長期借入金です。
法人成りの場合、もとの個人事業は消滅(廃業)しますので、個人の借入金も法人に引き継ぐことが
自然なように思われますが、そう単純な話ではありません。
借入金を引き継ぐ場合、まず貸し手(金融機関)の同意と協力が必要です。
しかし金融機関からすれば、設立されたばかりの法人が、借金をきちんと返済してくれるかどうか、
不安に感じるのはやむを得ないところでしょう。
そこで法人成りの場合、単純な個人→法人の債務引継ぎではなく、重畳的債務引受という手法が
広く使われることになります。
重畳的債務引受とはどのような仕組みでしょうか。
※補足
これまで、会計や金融の世界では「重畳的債務引受」という呼び方が一般的でしたが、
2020年から施行される改正民法では、この仕組みを「併存的債務引受」と名付けています。
この記事では、現時点で広く使われている「重畳的債務引受」として統一させていただきます。