重畳的債務引受は、その会計処理(仕訳)も注意しなければなりません。

法人側ではどのような仕訳が発生するか、事例で確認していきましょう。

 

【会社設立】

・個人事業者Sの法人成りによってA社が設立された。

・A社はSの借入金3,000,000円について重畳的債務引受を行った。

 

(仕訳)

保証債務見返3,000,000 / 保証債務3,000,000

 

(解説)

元々の債務者はSなので、A社の会計に借入金勘定を使用しません。

但し、共同して負担すべき債務を明確にするため、この仕訳を計上します。

 

【元利返済】

・上記の債務について、A社の口座から元金100,000円と利息8,971円が引き落としされた。

 

(仕訳)

役員貸付金100,000+支払利息8,971 / 普通預金108,791

保証債務100,000 / 保証債務見返100,000

 

(解説)

Sの借入金の返済なので、元金分については役員貸付金を計上します。

(後日、A社はこの金額について、Sから返済を受ける必要があります)。

また債務減少額と同額分、保証債務も減らしておきます。

 

※補足:決算書への記載と注記

ところで、上記の保証債務&保証債務見返は対照勘定と呼ばれるもので、通常は決算書に記載しません。

ではどこに記載するかと言えば、個別注記表の「貸借対照表に関する注記」に、以下の通り記載します。

 

・偶発債務

「代表取締役○○○○に対する重畳的債務引受による連帯債務 ○○○○円」

 

会計事務所の実務としては、決算整理で保証債務(見返)の全額をいったん相殺ゼロにして、翌期首に残債額で再計上する方法も考えられるでしょう。