法人成りのあらまし

それまで個人事業主として事業を営んでいた方が会社設立して、その事業を会社組織に

引き継ぐことを「法人成り」と言います。

法人成りにおいては、どこまでが個人の売上・仕入・経費になるのか、

どこからが法人の売上・仕入・経費になるのか、意識する必要があります。

 

本来であれば会社として営業を開始した時点で、事業用の口座・クレジットカード・請求書

・名刺・封筒などを個人名義のものから会社名義のものに一斉に切り替えることが望ましいのですが、

会社設立前後は多忙でもあり、商売は相手もあることですから、実際にはなかなかうまく行きません。

まず会社設立の挨拶状を取引先に送付して、振込先口座を徐々に会社名義のものに切り替えるとしても

すべて切り替わるには半年程度の期間がかかることも多いようです。

 

しかしいつまでもずるずると個人名義の請求書や銀行口座を使用していると、将来の税務調査において

個人側、法人側、双方で思わぬ指摘を受け、税金の追徴が発生する可能性もあります。

法人成りの場合は個人→法人の切り替え作業も見越した入念な準備が必要です。

 

法人成りでは、個人事業主としての最後の年である廃業年度の確定申告についても

注意しなければならない事柄が多くあります。詳しく確認して行きましょう。

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法人成り後の確定申告 その1

会社設立(法人成り)を行い、個人事業を廃業した年の確定申告について、主な注意点は以下の通りです。

 

○届出書

個人事業主が廃業した場合、廃業から1ヶ月以内に納税地の所轄税務署長に廃業届を提出する必要があります。

また、従業員を雇用して給料を支給していた場合は給与支払事務所等の廃止届出書も忘れずに提出しましょう。

 

○決算整理

減価償却は月割計算で行います。貸倒引当金は戻入のみ行い、繰入は認められません。

 

○所得の種類について

会社設立した事業年度の確定申告においては個人から法人への棚卸資産の譲渡は事業所得、

事業用固定資産の譲渡は譲渡所得となります。また、設立した会社からの給与は給与所得です。

 

○青色申告特別控除

廃業年度においても月割は不要、全額控除できます。

 

○青色専従者給与

法人成り後、同一暦年中に法人から給与の支給を受けてもかまいません。

会社設立前の専従者給与は全額経費として認められます。

 

○年末調整

個人事業で従業員を雇用しており、会社設立後もその従業員を引き続き雇用する場合、

年末調整はどのようにすればよいでしょうか?

面倒ですが、その年の年末調整については個人事業分、会社分をそれぞれ別々に処理して下さい。

書類も別々に作成する必要があります。源泉徴収票を個人・法人合算して作成することはできません。

従業員はその年、個人事業から新設会社へ転職したのと同じ扱いです。

 

○貸倒損失について

個人廃業後に売掛債権が貸倒となった場合には、廃業年度の確定申告について更正の請求が可能です。

 

○事業用固定資産の取扱いについて

法人成りに際して安易に個人から法人への譲渡・贈与・現物出資を行うと

個人側に所得税・消費税の課税関係が発生します。

従って自宅事務所や事業用車両については、なるべく個人が保有したまま法人に賃貸するほうが無難です。

そのメリットは・・・

→消費税課税事業者の場合、消費税の課税を回避できる。

→特に短期譲渡所得となる場合に、所得税の課税を回避できる。

→法人は利益状況に勘案して賃借料を経費計上できる(もちろん時価相当額の範囲であることが必要)。

→例えば自宅事務所を賃貸した場合、個人は住宅ローン利息・固定資産税・水道光熱費の事務所対応分を

経費にすることが可能であり、10万円の青色申告特別控除も利用できる

(但し消費税課税事業者は受取賃貸料に消費税も課税されることにご注意下さい)。

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法人成り後の確定申告 その2

地方税法上、個人事業者が廃業した場合には廃業の日から1月以内に都道府県に対して

事業税のみ申告書を提出する定めとなっています。

しかし実態としては多額の譲渡損失等の発生がない限り、申告書は提出しないで

確定申告時に以下の処理を行うことが一般的です。


(例)平成22年2月5日に廃業した場合

平成21年分の確定申告(平成22年3月に提出する)→いつも通り

平成22年分の確定申告(平成23年3月に提出する)→@ABの注意点あり

@事業税の欄に廃業年月を記入する。

A廃業までの所得が一定額を超える場合にはみなし事業税が計上できる(所得税基本通達37-7)。

・みなし事業税=(青色控除前の所得金額−月割り事業主控除額、年間では290万円)×5/105

・月割り事業主控除額は1月未満は切上げとする。また端数処理は都道府県によって異なるので必ず要問合せ。

(例えば大阪府では2ヶ月分の控除額は483,333円ではなく、484,000円と定められている)。

・なお廃業の翌年に事業税の賦課決定がなされてから、更正の請求を行って必要経費とすることも可能。

B事業税が課税される場合、廃業年度翌年の納付は通常の8月・11月の2回納付ではなく、8月一括納付となる。

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